30.エリートであるがゆえ・・・
小さい頃からの夢だったSeeD・・・
あらゆるものを犠牲にして訓練に明け暮れた少年時代・・・
そしてやっとの思いでその栄光を勝ち取るチャンスを得たというのに・・・
たった一度の・・・
しかし取り返しのつかない大きなミスを冒してしまったスコール・・・
完璧主義を誇る彼にとって、それは余りにも単純で、
どうにも許し難い愚かな失敗だった・・・
スコールはロビーの片隅に、まるで魂が抜けてしまったかのような放心状態で座り込んでいた・・・
その両の目からは彼の意に介さず、とめどなく大粒の涙があふれ出てくる・・・
「ハハ・・・俺って・・・カッコ悪いな・・・」
彼は思わずそう呟いた・・・
が、その言葉はこれまでSeeDになることを夢見てきた彼の半生を、走馬灯のごとく蘇らすのに十分な言葉だった。
普段は他人の目に過敏に反応する彼だったが、今やそんなことはどうだってよかった、 彼は周囲の人が驚き、振り返るほどの声を上げて咽び泣いた・・・
・・・ただただ彼は後悔と悲しみと、そして自らへの侮蔑の感情に押しつぶされそうになるのを必死に堪えるだけだった・・・
・・・ところが・・・
なんとSeeD試験に同行しているはずのキスティスがスコールのところへ向かって走ってくるではないか!
「・・・(;_;)???」
「スコール!ごめーん!!(^^;ゞ」
「・・・・・・し、試験ばどぼじだのだ??(;o;)」
「ごめんなさい、あたしうっかり時間伝え間違えちゃってて・・・
・・・って何泣いてるのよスコール!(笑)」
「笑い事じゃないのだ~っ!!(泣怒)
お、俺・・・遅刻・・・した・・・と・・・思って・・・それで・・・うっうっ・・・( ;_;)」
「ごめんねスコール(笑)・・・じゃあおわびにデート1回してあげるから、ね?ゆるして?」
「・・・・・・もういいのだ・・・・・・本当は何時に集合だったのだ?」
スコールのそのあまりにも意気消沈した様子にキスティスは少々気おされた
「あ・・・ん、えっとね、ほんとはね、4時・・・だったの・・・・・・」
「うぅわかった・・・また後で・・・」
「スコール・・・」
スコールは肩を落とし、とぼとぼと歩き去っていった・・・
キスティスは小さい頃からエリート街道を真っ直ぐに歩んで来たがために、挫折というものを味わったことがなかった。
しかしスコールは小さな頃からSeeDになることだけを夢見て死にもの狂いでその日その日を生きてきた・・・
彼女は、そんなスコールの気持ちをわかってやれなかったのだということをたった今悟ったのだった・・・
その胸の中は悔やんでも悔やみきれない気持ちでいっぱいだった。
「・・・あたしって・・・教師失格・・・・・・かな・・・」
キスティスもまた、肩を落とし、教官室へと戻っていくのだった・・・