44.お先に失礼

ベチャ☆

先ほどあまりに大量の水をスコールによって吸わされたがため、 体内の水分量が飽和状態をはるかに超えてしまっていたケツクワトルは、 落ちた拍子にその身体の穴という穴から水を噴き出した、
ピュー。

そしてどうやら意識を失ってしまったらしく、 彼(?)はぐったりとその身を床の上に横たえたままだ、 目も開けてはいない・・・。
「んもーだめじゃないのスコールぅ~!!」

「うっ・・・」
セルフィに怒られて気まずそうなスコール
「ほらぁ、イフリート縫い終わったよ♪」

「お、あぁ、さんきゅー」

「ほら、次はシヴァにアイロンかけるよ~♪」

「お、おぅ・・・」
スコールは床に転がしたままのアイロンをセルフィに手渡した。
セルフィは、先ほどまで自分がクシャクシャに洗濯物と一緒にしていたシヴァを丁寧に広げると、 これまた器用にアイロンをかけ始めた、ただ単に押し付けるだけのスコールの技術力とはわけが違う。

首を左右にリズミカルに振りながらアイロンをかけるセルフィから、 床にべったりと貼り付いてるケツクワトルに視線を戻したスコールは、 またセルフィに怒られるのも嫌なので自分でなんとかする事にした。

台所に向かったスコールは引き出しから曲がるストローを取り出すと、 カエルをふくらます要領でケツクワの肛門にストローを差し込み、ゆっくり息を吹き込んだ。


・・・3分後・・・


手厚い看護の甲斐あってか、ケツクワトルはようやくもとの元気な姿に復活した。
『ピ・カ・チュゥ!』

「おーよかったよかった、なんとか元に戻ったな」
スコールは、はじめは憎たらしいだけだったケツクワトルに対し、いつしか愛情を感じ始めていた、
・・・丁度その時・・・
「スコールぅ~直ったよ~♪」
部屋の方からセルフィの声がする
「おぉおぅありがとうありがとう、こっちもなんとか直ったぞ」
たった今直したばかりのケツクワトルを自慢げに見せるスコール
「うん、やったね♪」
セルフィに誉められてほっとしたような照れたような表情を見せるスコール
「・・・あ、あのさあセルフィ・・・えーと・・・」

「あっ、いけないもうこんな時間!あたし3時半集合なんだ~♪だからもう行くね~!!」

「あ、お、う・・・」
スコールがモゴモゴ言ってる間にセルフィはそそくさと出かける準備をして、 あれよあれよと言う間に玄関のドアを開けていた。
「じゃあお先に~!向こうで会えるといいね~♪」

「あ、あぁ・・・そうだな・・・」

「じゃあいちきまーす!」

「・・・あ、あぁ・・・いちきっしゃい・・・(謎)」
バタンと言う音と共に鉄の扉が閉まる・・・
そしてひとり残されたスコールを静寂が包み込む・・・

鉄の扉にひたいを預け、大きくため息をつくスコール・・・

が、次の瞬間突然扉が開いた!
「スコールっ!」

「うぉ!まっ、まだいたのかっ!?(-_-;)ゞ」

「試験、頑張ろうね!」

「あ、あぁ・・・頑張ろうな・・・」

「うんっ!じゃあ行くね♪」
そう言うとセルフィはクルンとあちらを向き、ハネた髪を揺らしながらテケテケと走っていった・・・。
「セルフィ・・・」
その後ろ姿を見送りながらスコールは無意識に彼女の名前を呟くのだった・・・。

(第2章「試験前に流れる時間」★完)

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