60.試食
テーブルの上に置かれた皿には、普段目にする黒いソースヤキソバではなく、 ちょっと薄い色のヤキソバが盛られていた。
(ただしメンはスパゲッティーだが・・・)
「さぁ食え( ●●)」
トンベリィはヤキソバをスコールの目の前に置くと、さっさと向こうへ行ってしまった。
「うぉっ、食えだって」(ス)
「お前が物欲しげに見てたからだろう」(サ)
「うぅむ・・・食べても大丈夫かなぁ」(ス)
「大丈夫だろ」(サ)
「うぅん・・・」(ス)
スコールはちょっと不安な気持ちになり、台所の方をチラッと見てみた。
サイファーもつられてそちらへ視線をやる。
すると隅のほうにトンベリィとサボテンダーの二人がナベごとヤキソバを食べてる姿が見える。
「毒は入ってないみたいだな」(サ)
「じゃあ食うか」(ス)
結局スコールは意外とあっさり食べることにした。
「うっ!」(ス)
「どうした?」(サ)
「うまいぞ」(ス)
「そうか」(サ)
内容とは裏腹に、淡々とした会話が交わされる。
と、そこへシェフのトンベリィがやってきた。
「お客様、お味の方は如何だ?」
言葉づかいは丁寧っぽいが、やはりどことなく危険な香りがする30歳。
「いや~うまいよ~なかなかやるじゃない!この味付けはどうやってんの?」
「・・・味か?・・・通常はウスターソースをかけるところにオイスターソースをかけてある、 そして仕上げにしょうゆを少々なべのふちから回し入れて香り付けをするんだ。」
「へぇぇ、オイスターソースか・・・これなかなかうまいじゃないの。」
「フッ、まぁな・・・(●ヘ●)」
トンベリィは初めて少しだけ笑みを浮かべたように見えた、が。
「でもどっちかって言うとミートソースの方がよかったな、スパゲッティーだし。」
「・・・何か言ったか?」
ギロ
トンベリィの表情がサッとアシュラ怒り面(謎)に変わる。
「あ・・・いや・・・な、なんでもないです・・・」
さすがのスコールもやはり30歳過ぎのおっさんにはかなわないようだ。
トンベリィは袂から帳面のようなものを取り出すと、 指の生えてない手で器用にペンを握り、なにやらサラサラと書き記している様子。
「な、何を書いてるのだ?(-_-;)」
「・・・あと一回怒らせたら刺すリストだ・・・」
「ゾゾーッ」
この人(?)だけは決して怒らせまいと心に誓うスコールだった。