90.狂気のスコール
「・・・りょっ、料理長・・・・・・」
目の前で巨大な機械の足に押しつぶされたトンベリィ・・・
その姿を目の当たりにしたスコールは一気に頭に血が上り、 未だトンベリィの周囲をうろうろしている巨大な機械のもとに駆け寄り、 遥か上方に付いてる頭部であろうと思われる部位に向かって怒気を込めて言い放った。
「どけぇっ!!」
スコールは巨大な機械を突き飛ばすと、既に平たくなってるトンベリィの元にしゃがみこんだ。
「スコールぅぅーっ、早く逃げてぇぇーっっ!!」
遠くの方でセルフィが呼んでいる。
が、、、
既にスコールの耳には誰の声も届かなくなっていた・・・
「料理長、料理長!料理長!!・・・なんとか言ってくれよぉ・・・・・・料理長ぉぉぉーっ!!!」
スコールの必死の呼び掛けに対してもトンベリィは何も答えてはくれない・・・
「誰か!早く救急車を・・・救急車を一台頼むのだーーーーっっ!!!」
余りの出来事にスコールの精神はすでにパニック状態に陥っていた。
そして・・・
スコールに足払いを食らわされ転がっていた巨大な機械はなおも起き上がろうとエンジン音を轟かせ始めた。
それに気づいたスコールもトンベリィをそっと道端に寝かせると、 涙をぬぐってゆっくりと立ち上がった、その顔はすでにいつものスコールのそれとは明らかに違い、 狂気と殺気に満ち溢れていた。
「オマエガコロシタノカ・・・オマエガ、オマエガソノテデ料理長ヲコロシタノカーーッッ!!!」
「ギギギ・・・」
巨大な機械に感情回路が付いていたのか、あるいはセンサーの作動によるものかはわからないが、 明らかに先ほどまでとは違うスコールの様子に気おされ、少しずつ後ずさりを始めた。
「はっ、はっ、はっ・・・スコールぅ~大丈夫~っ!?」
そして、やっと追いついてきたセルフィがそこで見たものは・・・
「ス、スコール・・・っ!?」
髪が逆立ち、全身が金色に光るスコールの姿だった・・・
「ウヲォォォォォーーーーッッ!!!!」
スコールはすさまじい気をその全身から発し始めた、と同時にその体からはますます光を放ち始めていた。
「!?」
一方その頃サイファーは既にドールの街まで下りてきていたが、背後からとてつもない気が発せられているのに気が付き、思わず振り返った。
すると先ほどまで自分がいた山の頂きの方で、不気味な金色の光が発せられている事に気が付いた。
「・・・なんだあれは・・・ま、まさかスコールのやつが・・・!!」
サイファーは慌てて今来た道を戻って行く・・・
そしてスコールは・・・
「スコール!ねぇスコールどうしちゃったのーっ!?」
セルフィが必死に呼びかけるもスコールは全く気が付かない様子で更にその気を高めていく・・・
そして・・・!
「えっ!?」
一瞬だった・・・
それはセルフィが瞬きをするかしないかのほんの一瞬の出来事だった、 そのほんの刹那の間にスコールの体は巨大な機械を貫き、辺り一面に機械の破片が散乱していた。
肝心のスコールはというと、先ほどまで金色に輝いていたその体からはみるみる輝きが消えていき、 全身が元に戻ったかと思うと足元から崩れ落ちていった・・・
その信じがたい出来事を目の当たりにしたセルフィはあっけにとられただただ呆然と立ち尽くすだけだった・・・が、
「・・・あ・・・スコールぅぅーっ!」
じきに我に返り、慌ててスコールのもとに駆け寄ろうとした、が・・・
「きゃっ!?」
「おいっ!何があったんだ!?」
追いついてきたサイファーにいきなり襟首を引っ掴まれよろめくセルフィ
「しっ知らないよ~・・・なんかスコールが急に金色に光って、それで、それで・・・(泣)」
「チッ・・・」
サイファーは舌打ちをするとセルフィを放り出し、スコールのところに駆け寄りそして抱え上げた。
「お前はあいつを運んでやれ!」
「・・・え?」
「1900時までもう時間がないんだ!急げ!!」
「う、うん・・・」
セルフィはサイファーに指示された通り、例によってバラバラのゼルを拾い集め始めた。
「先に行ってるぞ!」
「あ~ちょっとまってよサイファーはんちょ~!」
セルフィはゼルの部品を慌てて拾い集めると、サイファーについて山を下りていった。