97.微妙な関係
ここはバラムガーデン正門前。
ゼルが開発したTボードの性能は素晴らしく、キスティスはスコール達に大差をつけて一番にゴールしていた(違)
一足先についたキスティスはみんなが着くのを待ってる間、先ほどゼルの家で読んだ雑誌のことを思い出していた。
「うーんお肌の曲がり角ねぇ・・・」
キスティスは自分の頬を押したり引いたり撫でたりしている。
とその時、向こうの方からハネた髪の少女が走ってくるのが見えた。
「やっと来たみたいね」
「せんせ~い♪」
セルフィは跳びはねながらこちらの方に手を振っている。
ほどなくして彼女はキスティスのところまで走りついた。
「お疲れさまセルフィ、さすがのセルフィもちょっとバテたみたいね?」
「えへへ~そんなことないですよ~♪」
「あらそう?やっぱり若いっていいわね~」
「(笑)」
「(あたしも少し走った方がいいかしら・・・)」
「?」
「・・・あ、えっと・・・そうそう、他のみんなはどうしたの?」
「え~?知らないですよ~♪」
「・・・そう・・・まだしばらくかかりそうね」
「そうですね~♪」
「ここ、座ったら?」
キスティスは自分の隣を手のひらでポンポンとたたく。
「は~い♪」
セルフィはキスティスの隣にちょこんと腰掛けた。
「ふ~」
冬とはいえ走ってきたばかりで暑いのだろう、 セルフィは手の甲で額の汗をぬぐい、顔のあたりを両手でパタパタと扇ぎ始めた。
「ほら(笑)」
キスティスはハンカチをすっと差し出す。
「あ、ありがとうございます~♪」
セルフィはキスティスからハンカチを受け取り、汗をぬぐった。
「あ~いい匂~ぃ♪」
「そ、そう?」
「これって香水ですか~?」
「え、ええそうよ」
「へぇ~香水か~(クンクン)」
セルフィは何度もハンカチの匂いをかいでいる。
「セルフィって・・・歳はあんまり私と違わないのよね?」
「え?先生はいくつなんですか~?」
「18歳よ」
「え~?まだ18なんですか~?もっと上かと思ってました~」
「それは・・・オバサンってこと?(ズキッ)」
「ん~オトナだな~って」
「そ、そう?(ホッ)」
「トラビアって田舎だから、香水とかキレイな洋服とかオシャレな物ってあんまりないんですよ~」
「あぁそうか、セルフィはトラビアから来たばかりだったのよね」
「うん」
「トラビアって。。。どんなとこ?」
「うん、とーってもいいところだよ~♪町の人はみんないい人ばかりだし~♪それからね~・・・」
セルフィのトラビア話はそれからしばらく続いた。
その話をキスティスはにこやかな表情でうなづきながらずっと聞いていた。
「・・・なの~笑っちゃうよね~♪」
「・・・楽しそうね」
「うん楽し~♪トラビアのこと話してるのってほんとに楽し~♪」
「トラビアのことだけ?」
「・・・うん・・・こっち来てからはまだ・・・気の合うお友達もあんまりいないし・・・」
セルフィはいつもの明るい表情からは想像がつかないような寂しげな表情をちらと見せた、 そんなセルフ
ィを見てキスティスはなぜだか少し申し訳ないような気分だった。
「・・・うん・・・」
「そうだ~!」
「?」
「キスティス先生友達になってよ~!」
「え?友達?」
「嫌~?」
「え、い、嫌とかじゃなくて・・・」
「じゃあ決まりね~♪これからもよろしくね先生~♪」
「え、えぇ・・・」
実はキスティスは若くして教職についてしまったがため、今まで友達というものを実感したことはなかった。
シュウは・・・まぁ友達といえば友達だが、やはり職場の仲間という感覚が強い。
が、改めて”友達”という言葉で自分の中に飛び込んできたセルフィという子に出会ったことで、ちょっと戸惑いが隠せないキスティスだった。
「セルフィ・・・」
「ん~なぁに~?」
「あの・・・」
とその時、一陣の風が二人のそばを駆け抜けて行った。
ヒューッ(風)
「寒~いっ!」
「ずっと座ってたから体が冷えちゃったわね・・・まだこないのかしらあの子達・・・」
キスティスは来た道の方を目を凝らして見つめた、
しかし未だスコール達の姿は見えないのであった。